おにいちゃんの友達

「マドカ、なんか急に大人しくなっちゃってどうしたのよ?」

兄とマサキの背中を見つめながら、マドカの耳元でささやいた。

「え?そう?」

急に耳元に息が当たって驚いたマドカは少しのけぞって言った。

「そうだよ。もっと色々しゃべってくれなきゃ、私がやられっぱなしだわ。」

「ほんと、マサキ先輩きついよねぇ。ユイカに。いつもあんな風なの?」

知ってるくせに。

軽くマドカをにらんでみた。

「それにしても、ユイカのお兄ちゃんはいつも穏やかだよねぇ。マサキ先輩とは対照的っていうか。」

対照的。

私もかつてはそう思ってた。

だけど最近は、一見そう見えるんだけど、根っこの部分はとても似ているような気がしていた。

じゃなきゃ、小学生の頃から親友でなんていられるはずがないって思う。

兄もマサキも、基本穏やかで優しい。

そして、時に人を寄せ付けないようなクールな部分があった。

時々、私がその壁を破って土足で入り込もうものなら、えらく冷たく突き放されていたような記憶がある。

当時は幼くて、ただの意地悪にしか見えなかったけど。

「お腹空いたね。」

マドカが駅の明かりを見つめながらつぶやいた。

ほんとお腹空いた。

ようやく駅に着いてホッとする。

「ここだよ。」

兄が私達の方を振り返った。