おにいちゃんの友達

「ちょっと、ごめん。」

キッチンの方から母の声が聞こえた。

皆一斉に母の方を見た。

「今日は一緒に夕食行きたかったんだけど、あゆみおばちゃんから今電話があってね。ちょっと至急話があるみたいで、これからお母さんあゆみおばちゃんとこ行ってくるわ。申し訳ないけど、あんた達4人で行ってきてくれる?」

あゆみおばちゃんとは、母の姉だ。

未だに独身で、小学校の校長先生をしている。

あゆみおばちゃんは色んな話のネタを持っていて、小さい頃からあゆみおばちゃんの話を聞くのが大好きだった。

そういえば、あゆみおばちゃんにもしばらく会ってないな。

「ああ、いいよ。4人で行ってくるわ。」

兄がそう言って立ち上がった。

マサキも一緒に立ち上がる。

母は、「ごめんねぇ」とマサキとマドカに頭を下げた。

そして、兄に晩御飯代といってお金を渡した。

「あゆみおばちゃんによろしくね。また遊びに行くって伝えておいて。」

私がそう言うと、母は少しだけ微妙な笑顔でうなずいた。

至急の話って何だろ?

母の微妙な笑顔が、私の胸を少しだけざわつかせた。

外に出ると、もうすっかり日も沈んで藍色の空が広がっている。

「今何時だっけ?」

マサキが兄に尋ねた。

兄はズボンのポケットからスマホを取り出して確認する。

「18時45分。」

「結構遅くなっちゃったな。マドカちゃんは大丈夫?」

「はい。」

マドカはいつになく大人しい。

「やけにマドカちゃんに優しいよな。」

兄がマサキをからった。

「かわいい子には優しいんだ、俺。」

マサキはそう言いながら、私をチラッと見下ろした。

「いつも申し訳ないなぁ、ユイカ。」

本当に申し訳ないわよ。

どれだけ私が傷ついてきたと思ってんの?

「ほんと、マサキはユイカに厳しいよなぁ。ユイカはすっかりお前のこと嫌ってるぞ。」

嫌ってる・・・わざと言ったのか、兄の表情は薄暗い中ではよくわからなかった。

「嫌われて上等!」

そういうマサキの顔もよく見えなかった。