おにいちゃんの友達

「俺はパスタでいいけど、二人はどう?」

マドカの方に視線を向けると、マドカは大きく頷いた。

「ユイカは?っていうか、これでユイカがパスタ却下とかしたら、置いていくけどさ。」

「置いてこうぜ。」

マサキはケタケタ嬉しそうに笑った。

思いきりほっぺたを膨らまして、兄とマサキをにらみつける。

正直に言うと、マサキの顔は見れないから兄だけにらみつけてたわけだけど。

「もちろんパスタでオッケーです!」

力を込めて言ってやった。

「あら、残念。」

マサキはわざとらしくガックリ肩を落とした。

ふん。

マドカは心配そうな顔で私を見ている。

私は口パクで「大丈夫」って返した。

こんなの小学生の時からだもん。全然へっちゃら。

なんだけどね。

少しだけ、胸の奥がきしんでいた。

どうせ、どうせなんだって。

「じゃ、パスタ屋に決まりだね。かーさん。」

兄がキッチンにいる母に呼びかけた。

母は神妙な顔つきで誰かと電話をしていた。

「電話か。」

兄はそのまま向き直る。

「それにしても、マサキ、えらくおしゃれな店知ってんじゃん。」

兄はニヤニヤしながら、マサキの腕をつついた。

あー。

こういう話の展開。今は見たくないし聞きたくない。

マサキはまだ例の彼女と付き合ってるんだろうか。

中学2年だったあの日以来、兄もぱったり私にその話はしてこなかった。