階段を上りきったところで、後ろを振り返った。

マサキは、私をおちょくったことなんてすっかり忘れてしまったような笑顔で、隣の友達に夢中になって話しかけていた。

ふうん。

やっぱりね。

だと思ったけど。

私は前を向いて、軽くため息をついた。

そして、気を取り直して教室の方へ走って行った。


兄とマサキは、小学校からの親友。

生真面目で穏やかな兄とは一見対照的に、マサキは活発でよくしゃべってよく笑っていた。

こうも対照的に見える二人がどうして分かり合えるのか、未だにわからない。

当時小学生だった私には、それくらい性格がかけ離れているように映っていた。

優しい兄の後ろを金魚の糞みたいにくっついていた私を、マサキはいつもからかった。

チビ

デブ

ブス

この三大悪態は、耳がタコになるくらいに聞かされた。

あまりに聞かされすぎて、今ではそれが悪態というよりはむしろ親しみの情からくる愛称に聞こえるようになった自分が不憫に思える。

でも、私だって一応女の子だ。

最初は腹が立って、悔しくて、いつも兄の後ろで泣いていた。

だけど、私が泣くとマサキは悪態を付きながらも、すごく不安そうな目で私を見ていた。

まるで自分が言われてるみたいな、半分泣き出しそうな顔で。

そんな顔になるなら言わなきゃいいのに。