おにいちゃんの友達

「ごめんねぇ。やっぱり変な奴だよね、マサキって。」

マドカを振り返って謝った。

どうして私が謝るんだかわかんないけど。

マドカは「全然」と言って首を横に振った。

マドカと並んでリビングに入る。

「おかえり、ユイカ。・・・っと、マドカちゃん。」

ダイニングテーブルで座っている兄がマドカに軽く会釈をした。

マドカも慌てて兄にペコリと頭を下げる。

「ただいまぁ。そういえばお兄ちゃんもマドカと会うの久しぶりなんじゃない。」

「うん、そうだな。」

兄は笑いながら、手元のスマホに視線を向けた。

「で、何食べに行くかだよ。ユイカ達は何食べたい?」

私はソファーの下に鞄を置いて、ゆっくりと座った。

マドカも私に続いて隣に腰掛けた。

「えー、何がいいかなぁ。マドカは何がいい?」

正直、今は何でもよかった。

普段ならパスタだとか焼き鳥だとか、言っちゃうんだけどね。

何でも良い時は誰かに決めてもらうのが一番だ。

急にその場にいる皆がマドカ待ちみたいな状態になって、マドカも少し慌てた表情で私を見た。

そして、小さい声で言った。

「何でもいいです。」

「そんな気を遣わなくていいよ。」

兄は優しく笑った。

「んじゃ、俺決めていい?」

すかさずマサキの声がしゃしゃり出た。

マサキが私達の方に顔を向ける。

凝視できなくて、マサキの言葉に反応することもなくうつむいた。

「俺さ、肉食いたいなーって思ってたんだけど、やっぱ女の子と食べるんだったら、もう少しおしゃれっていうか上品なとこがいいと思ってさ。こないだ駅前に出来たパスタ屋さんなんてどう?」

思いがけず、色々と考えて提案してきたマサキに心の中で「優しいじゃん。」とつぶやいた。