おにいちゃんの友達

なんだかフワフワした気持ちのまま、時間だけが過ぎていく。

「そろそろ出た方がいいじゃない?」

しばらくスマホをいじってたマドカが顔を上げて言った。

時計を見たら、17時半。

そういえば、18時くらいには帰ってきてねって言われてたっけ。

体中の血液がぞわぞわ音を立てて胸と顔を行き来している。

緊張なのか、期待なのか、不安なのか、やっぱり私が変なのか。

「うん、そろそろ行かなきゃね。」

ドキドキする胸を押さえて立ち上がる。


電車に揺られながら、窓に映る自分の顔が妙にしかめっつらになってるのに気づいた。

こんな仏頂面、サイテー。

またブスって言われる。

ブスって言われるのに慣れてきたとはいえ、やっぱり毎回多少は傷つくものなのよ。

口の両端をくいっと上げてみる。

うん、これでよし。

かわいい女子は、いつも笑顔でなくっちゃ。

「ユイカ、変な顔。」

窓に映る私の顔を見て、マドカが笑った。

わ、見られてた。

くすくす笑うけど、マサキの話は触れてこなかった。

きっとマドカの優しさだろう。

ほどなくして、駅に着いた。

マドカに悟られないように、静かに深呼吸する。

家までの道のり、まっすぐ帰りたくない衝動にかられる。

足を怪我したマサキが家の中にいる。

そう思うだけで胸が張り裂けそうだった。