おにいちゃんの友達

塾は駅前にあった。

駅までの住宅街を二人で歩く。

夜の暗闇は、マサキと二人で歩いている緊張をほぐしてくれた。

「お兄ちゃんはどうして学校にも行かず、一人で勝手なことしてたんだろうね。」

「それがわかればこんな苦労もしないさ。」

「なんだか上から目線だね。」

「今日だけはな。今日のシュンタはどう考えたって皆に迷惑かけて悪いと思うぞ。」

「まぁね。」

「でも、無事ってわかったからこんなことも言えるんだけどさ。」

二人の足音が暗闇に静かに響いている。

「お兄ちゃんは幸せだね。こんな風に心配してくれるマサキがいて。」

私も兄と同じくらい幸せな気持ちだった。

マサキは照れたのか、軽く「ふふん」と笑った。

「マサキは、お兄ちゃんみたいに学校休んだり、一人になりたいとか思ったことはないの?」

「そりゃ、しょっちゅうあるさ。」

「あるんだ。」

「ユイカだってあるだろ?」

「ないわ。だって学校に行けばマドカもいて楽しいし、何より一人ぼっちって寂しいから嫌いなの。」

「へー。意外とか弱いこと言うんだな。」

マサキは私を見下ろして笑った。

「失礼ね。」

と言いながら、マサキの腕を軽く叩いた。

「マサキは違うの?どういう時に一人になりたいとか思うの?」

「男ってさ、色んなことが煩わしくて面倒臭くなっちゃう時ってあんだよ。そういう時は一人で色々考えたいんだ。」

「誰かに相談すればいいじゃん。」

「男はきっとプライドが高い生き物なんだろな。相談するのもプライドが邪魔する時があるんだ。」

「変なの。」

「ほんと、変だと思うよ。」

マサキは夜空を見上げた。