おにいちゃんの友達

マサキも平静を装ってたけど、きっと私達のために一生懸命不安な気持ち堪えてたんだと思った。

顔を覆ったままのマサキを見ながら、思わずぎゅっとその肩にしがみつきたくなる。

ありがとう・・・って。

その時、マサキが顔を上げて私を見た。

ようやく、現実に引き戻されてそのマサキの目にドキンとした。

「俺、マサキの塾まで行ってくるよ。話したいことあるし。」

「じゃ、私も行く。」

マサキの目に吸い込まれるように言っていた。自分で言いながら驚く。

「遅いし、お前は家で待ってろよ。それに、男同士の話があるから、ユイカがいたら正直話しにくいしさ。」

もっとマサキのそばにいたかった。

「大丈夫よ。お兄ちゃんと話してる時は聞こえない場所で待ってるから。私だってお兄ちゃん心配だもん。早く顔が見たいわ。」

マサキは少し困った顔をして母の方を見た。

母も困った表情で首を傾げた。

「しょうがねぇな。ユイカ、少し遅くなるけど大丈夫ですか?」

母は私を見ながらゆっくりと頷いて、そして長く息を吐いた。

「それにしても、本当によかった。お兄ちゃんに何もなくて。マサキ君、今日は遅くまで本当にありがとう。」

「俺も安心しました。焼きそばまでご馳走になっちゃって、こちらこそありがとうございました。」

マサキは立ち上がると、ペコリと頭を下げた。

「ユイカ、必ずお兄ちゃんと一緒に帰ってくるのよ。何かあったら電話ちょうだい。」

「わかった。」

私も立ち上がった。

マサキの後に続いて玄関に向かう。

マサキの背中は、いつもと違って疲れ切っていた。

ごめんね。マサキ。

そんな背中を見つめながら、心の中でつぶやいた。