おにいちゃんの友達

マサキがコップのお茶を飲みながら尋ねた。

「あゆみおばちゃん?って、こないだパスタ食べに行った時に言ってたおばちゃんだよな。確かお前のお母さんのお姉さんとか。」

「うん。週末、お兄ちゃんとお見舞い行こうって言ってたの。おばちゃん、今体悪いんだ。」

「そっか。」

「おばちゃんはね、私達が悩んでるとき、いつもすごくいいアドバイスをくれるの。前向きになれるような。だから、悩んでる時は話を聞きに行くのよ、私も。」

マサキはコップをテーブルに置いた。

「おばちゃんちにいるといいな。」

とにかく、お兄ちゃんが今どこにいるかが一番大事だった。

母がキッチンでおばちゃんに電話をかけていた。

「え?そうなの?」

その時、母の甲高い声がリビングに響いた。

「ビンゴかもな。」

マサキがすくっと立ち上がった。

胸の奥がすーっと抜けていくような感覚。

私もマサキの隣で立ち上がる。

母は電話を切って、リビングにやってきた。

「お兄ちゃん、おばちゃんの家にお昼過ぎに来たみたい。」

「やっぱり!」

私とマサキは顔を見合わせた。

「色々と話をしたみたいなんだけど、夕方17時頃、家に帰るって出たって言うの。」

おばちゃんちからうちまでは小一時間。

今は20時だから、寄り道してたらそろそろ帰って来る頃だろうか?

「今日塾じゃなかったっけ。」

マサキが母に尋ねた。

「ええ。」

母は頷く。

「そのまま塾に行ってるてことないかな。」

母は、「あー!」と目を丸くして口を押さえた。

それ、めちゃあり得る。

そうであってほしい。

「塾に電話してみるわ。」

母は少し興奮気味に電話をかけた。

「きっと塾に行ってるよ。俺、絶対そう思う。」

マサキはストンとイスに座った。

母が塾の担当者と電話でやりとりしながら、私達にオッケーサインをした。

いたんだ。塾に。

マサキはその瞬間、両手で顔を塞いで、「良かった・・・。」と大きく息を吐きながら言った。