おにいちゃんの友達

「マサキ君もお腹空いたでしょう。」

母は、キッチンで作った焼きそばを盛ったお皿をテーブルに置いた。

熱々の焼きそばからはソースの香ばしい香りが立ち上っていた。

「うわ、うまそ。」

こんな状況でもちゃんとお腹は減るんだ。

私のお腹もぐーぅと鳴った。

「はい、ユイカも食べなさい。」

母はにっこり笑って私の前にも焼きそばを置いた。

「頂きます!」

マサキは手を合わせて、早速焼きそばにかぶりついていた。

「おばさんの焼きそば、昔よく食わせてもらってたなぁ。やっぱりうまいわ。」

「そんなこと言ってくれるんだったら、もっといっぱい作るわよ。」

母はからから笑いながら、キッチンへ戻って行った。

母の焼きそばは何度も食べてるのに、今日の焼きそばは格別おいしいような気がした。

美味しそうに食べてるマサキが隣にいるからかもしれない。

「あいつもお腹減ってんじゃないかな。」

焼きそばを口に頬ばりながら、マサキはポツリとつぶやいた。

「そうだね。お兄ちゃんもお腹空いたら帰ってくるかもしれない。」

時計を見たら19時半をまわったところだった。

誰にも告げずに、スマホは留守電にして、一体何してんの?

マサキにもこんなに心配かけて。

焼きそばを食べながら、兄にだんだん腹が立ってきた。

週末、あゆみおばちゃんちにお見舞いに行こうって言ってたのに。

あゆみおばちゃん。

あゆみおばちゃん?

ふと、おばちゃんのことが気になった。

ひょっとして、私と一緒に行くのが嫌で前倒しで今日行ってるってことはない?

「お母さん、今日あゆみおばちゃんには連絡した?」

「えーっと、朝一で電話したわ。大丈夫そうだったから、今日は顔は見に行けてないんだけど。」

「もう一度電話してみて。」

「どうして?」

「お兄ちゃん、おばちゃんちにいるなんてことないかな?週末、お兄ちゃんとおばちゃんち行く予定だったの。」

母がキッチンから出て来た。

「そうなの。とりあえずあゆみおばちゃんにも確認してみようか。」

違うかもしれない。

だけど、気になる場所はつぶしていかなくちゃ。