おにいちゃんの友達

「早く帰ってあげて。何かあったらいつでも電話して。」

マドカは私の不安な気持ちを察したかのように、泣きそうな目で私に言った。

「うん。ありがとう。」

私はそのまま駅の改札に向かって走り出した。

お兄ちゃん、今どこにいるの?

何考えてるの?

こういう時に限って電車は出た後だった。

早く早く!

気持ちだけが急いてる。

しばらくしてスマホがふるえてるのに気づいた。

いつから鳴ってたんだろう?

見ると、マサキからだ。

ふるえてるスマホを耳に当てた。

「はい。マサキ?」

「お前、今どこ?」

いつも聞き慣れた声のはずなのに、携帯を通した声は普段のマサキの声じゃないみたいだった。

マサキからかかってくるなんて、何年ぶりだろう。

「駅。あと5分ほどで電車が来る。」

「シュンタ、大丈夫か?」

「え?」

「全然電話でないんだ。しかも留守電になってるし。」

「そうなの。さっきうちのお母さんからも電話があって、そう言ってた。」

マサキの声にしがみついていた。

どうか電話を切らないで。

この電話が切れてしまったら、不安でどうにかなりそうだった。

「俺もお前んち行くから。シュンタは馬鹿じゃないからきっと大丈夫だ。俺も絶対連絡つけてやるから心配すんな。」

マサキの声が私の不安を抱きしめてくれているようだった。

マサキが来てくれる。

こんなにもマサキの存在が大切だと思ったことがなかった。

「マサキ、ありがとう。」

そう言った私の声は既に涙で鼻声になっていた。

「大丈夫。俺もすぐ行くから待っとけ。」

「うん。」

マサキの電話が切れた瞬間、必死に堪えていたものが全部目の中からあふれ、こぼれ落ちていく。

横で電車を待っていたおじさんが「大丈夫?」と聞いてきた。

こんなに泣きじゃくったのはいつ以来だろう?

止めようと思っても止まらない。

電車が来る前に止めなくちゃ。

両手で胸を押さえて、必死に自分に言い聞かせた。