『……知ってる』
嘘ついたことに怒られるかと身構えた私に、笑いを含んだ声が聞こえる。
『え?!』
知ってるって、気づいてたってこと!?
『だから、気づいてたって。
なんか、からかいたくなってさ』
そう言いながらまたかたを震わして笑う学園王子。
……つまり、私は嵌められた訳ですね?
嵌められたと分かった瞬間、私の中でふつふつと怒りがこみ上げる。
あれだ。私。
『……だ』
『ん?』
こうやって、首をかしげながら笑うこいつを。
好きにはなれない。
否、苦手だ。
『私、学園王子、苦手‼︎‼︎』
目の前の学園王子にそう言い捨てて、雫を引っ張り理科準備室から出て行く。
……掃除できなかったのはもう仕方ない。
邪魔が入ったんだから、出来るわけないし!!!
『……小春』
足を止めた私の肩を雫がたたく。
『何?』
『あんた、やっぱり最高‼︎』
そう言って親ゆびを突き立てて笑った雫の声が、廊下に響く。
……はぁ。
『前途多難、だよ』
今更ながら、やってしまった感に包まれてしまう。
