涙をぬぐいながら走り去る女の子を見て、なぜか胸が痛くなる。
……もしも、私が恋をしたらああなるに決まっている。
振られて傷ついて泣いて。
そんなのを味わうより、恋なんてしないほうがいい。
『そういや雅、あんた学園王子と同じクラスだったよね⁇』
さっき私が思ったことを雫が雅に言う。
『まーそーだね。
私あいつに興味ないけどさ。
何々? 雫興味あるの?』
ニヤニヤしながら雫を茶化しに来る雅を雫が睨みながら怒る。
『そんなに怒らなくてもいいだろ?』
『そーだよ? 雫が澪雄君一筋なのはみんな知ってるもん』
そう言うと顔を赤くした雫は桜の後ろに隠れる。
『……雅、好きな人できたことあるの?』
男勝りな雅は、恋愛とは程遠いと思っていたけど……。
何となく、実際はどうなのか知ってみたかった。
『私? 私はいたわよ昔ね⁇
ま、そいつとは高校で別れてそれっきりだねどね』
そう言って笑う雅は確かに恋する乙女の顔だった。
