何とか、決勝まで進んだ私たち。

少し時間があるのをいいことに私は外の空気を吸いに、会場の外に出た。

ナゼかそこには待ち構えてたと言わんばかりの涼の姿が。

私に気づいて声をかけてきた。

「お疲れ様!いい試合してたな」と笑ってくれる涼。

「うん。ありがとう、拓斗さんのおかげなんだ」と私が言うと、複雑そうな顔をしていた。

私は涼のこの顔の意味を知っている。

でもあえてそれを口にしてはいけないような気がした。

「なあ、聞いていいか?」と涼は行ってくる。

どストレートな涼のことだから言いたいことも大概はわかる。

私は小さく頷いた。

「岬さんから聞いた。別れたんだってな?で、兄貴と付き合ってるんだよな?後悔は無いのか?」って。

やっぱり直球。涼は昔からそうだった。

いつもからかいながらも、誰よりも心配してくれていた。

「岬さんのこと想うと、胸が痛むけど、後悔はしてないの。ほんとは付き合ってはないけどね。迎えに来るからって言ってくれたし、信じて待ってたいのに、申し訳なくて、言えないけど、拓斗さんを好きになり始めてる自分がいて…」

私は素直に今の想いを伝えた。

涼には隠してもバレる。なら、いってしまった方が楽な気がしたから。

「そうか。お前がそれでいいならいいよ。応援する。確かに兄貴が笑顔になったのは事実だし、リハビリも積極的にしている。それに…イキイキしてるんだ。毎日楽しそうで。あんなに覇気がなかった大嫌いな兄貴はもういなくて嬉しくはあるんだけど、どこかでお前が無理してる気がしてて。兄貴が可愛そうだったからただそばにいてるって感じがして…そうじゃないんだな?」

涼がこんな風に言うのは初めてでとても驚いた。

けど、これが涼の本心なのかもしれないと思うと、少し嬉しかった。

「私の意思でいるんだよ。拓斗さんと一緒にいたいって。けど、それは勝手なわがままで。拓斗さんは私のために、早く好い人見つけてお前を開放してやらないとなってよく言ってるの。私を岬さんに返してやらないと申し訳ないって。けど、それを聞くたび胸が痛むの。岬さんには申し訳ないけど、私はこのまま拓斗さんと一緒にいたいって思ってる。だからもどかしくて、悔しくて、苦しくて…」

私はそう伝えた。

「うん。わかった‼大丈夫だよ!岬さんも、俺もお前の幸せを誰よりも願ってるから。すぐじゃなくていい、いつかちゃんと伝えれば、伝わると想うよ!さてと、お前の本気を見たし、俺もコートでひと暴れしてくるから応援しろよな!」と涼は言い残して、会場へと戻っていった。

私も会場に戻ることにした。

中ではすでに男子の試合が始まっていて、熱気もボルテージも最高潮に達している。

私は観覧席から激を飛ばした。

「遅かったやん‼」と言ってきたのはみより。

「う、うん。涼と話してて…」と私が言うと、そっかと言って笑うだけ。

いつも何も気かないでいてくれるみより。

「私ね、ほんとの気持ち、話したの涼に」と言うと、それだけで理解してくれたのか、うんとだけ言った。

涼は相変わらずカッコいい。コートの上では誰よりも輝いている。そんな涼を見てるのはたまらなく好きで思わず声を張り上げてしまう。

興奮気味に横から叫んでるみより。

ゴールを決めたときにこっちに視線を送ってくる。

あれは反則だと思う。だから女子はほっとかない。

ダイチさんと岬さんの姿が見当たらないけど、二人はどこに行ったのかしら?

拓斗さんはもちろん涼を応援しているし!

大差で涼のチームは勝った。

涼はこっちをむくと、Vサインをした。

私はVを返した。

もちろんウチもそれなりの成績を残した。

どうしよ。やっぱり今年も涼のところと当たる。

拓斗さんは私たちのところに来た。

「涼とお前のところが当たるのは複雑だな」って。

「そうですね。けど、ちゃんと見届けてください!ウチの功績を。ウチは涼には負けません‼ウチの黄金コンビなめないでください!」と私は言っていた。

その横で大爆笑しているみより。

「なめてはないけどね?弟を応援したい兄の気持ちもわかってほしいね?」と拓斗さんは言う。

私はコートに向かって叫んだ。

「ダイチさーん、岬さーん、みなさん!やっちゃってください!」と。

「涼!負けんなや!」と私の横で拓斗さんは叫んでいた。

私たちは火花を散らす。

周りもざわついているし、ボルテージMAXで試合が始まった。

最初からハラハラドキドキする試合。

涼は得点を量産していく。ウチの男子陣も負けてはいない。必死に食らいついている。

涼が得点するたび、心でよしっ!って思ってしまう自分が情けないけど。

私は声を張り上げて、ウチの男子陣を応援した。

一歩及ばなかった。涼に負け、今年も2位に終わってしまった。

けど、前回は、涼は3位だった。それが今回は優勝だ。

どれだけ努力したのかが伺える。相変わらずあの化け物が大暴れしていたけど。

確かに二人は強かった。あの二人がコートで暴れるとかなりの地響きがすることを知った。

私たちももっと頑張らないと!

私たちは皆の元に行った。悔し泣きしているダイチさんと岬さん。

二人にとって最後の試合で、結局全国という大舞台にはたてなかったのだ。

二人の悔しさはよくわかる。

けど、なんて声かけていいかはわからなくて、私は唇を噛んだ。

「ダイチさーん、負けちゃいましたけど。メッチャかっこ良かったですよ!誰よりも輝いてました。また惚れちゃいましたぁ」って明るく言うみよりは強いと思う。

そして二人は抱き合ってる。

「お疲れ様でした。先輩」と私はいうことしか出来ない。

本となら、私だって、岬さんに抱きついて、笑顔で一番でしたよって言ってあげたい。

でも、今はもう彼女じゃない。

岬さんには優しくて、可愛い彼女がいる。

岬さんを抱き締めながら笑う彼女。彼女の目にもうっすら涙はにじんでいる。

皆ももらい泣きしている。そんな中でとうてい笑える勇気もない私。

少し見てるのが辛かったけど、拓斗さんは優しく私の肩を抱いてくれる。

それだけで少し落ち着いた。

「春こそは!優勝します!」と泣いてる二年生の先輩。

私たちは会場を後にした。

この日、学校に戻った私たち、3年の先輩らは、もう少し、バスケをしたかったと言いながら涙して引退した。

全国に行けていればもう少し試合が出来たのに…

女子も男子も、全国は遠かった。

部活を引退した先輩たちは、登校日も少ないため、学校にはほとんど来なくなっていた。

私とみよりは先輩らに、託された。

私とみよりは全国を目標に共に頑張り始めた。