ー試合当日

私たちは会場にいる。

フルメンバーに今回から起用された私。

怖さと不安で胸を締め付ける。

「大丈夫‼お前らしくやればいける‼恐れるな。自分を信じろ!見守ってる!」

そう言って拓斗さんは私を抱き締めてくれた。

拓斗さんに言われると頑張れそうな気がする。

拓斗さんにありがとーと私は言った。

コートに出るといきなり怖さが溢れてきた。

不安と恐怖で、体が強張る。

「大丈夫?みずき」と声をかけてくれたのは、みより。

う、うんとは言うものの声はやっぱり震えている。

「みずきちゃん、こんなときに悪いんだけど、ジャンプボールオネガイ出きるかしら?」と綾子さんに言われてしまう。

練習とは訳が違う。震えが止まらないほど怖くてたまらない…

けど…やらなくちゃいけない…そう思ってスタンバイした。

泣きそうになってる私によく通る声が届いた。

「大丈夫‼自分信じな!」って。

すぐにわかった。岬さんだ。それにナゼか隣にいる涼も自信もってと声をかけてくれた。

私は頑張ろうと強く思った。

試合が始まった。

ジャンプボールをものにしてみよりところに落とす。

ものの、数秒。見事に全員を抜き、交わしながらゴールへと近づいていくみより。

あっさり先制点を取ってしまった。

そのあとウチは軌道にのり、次々シュートを決めていく。

気づけば大差で前半を終えていた。

拓斗さんはすかさず私ところに来て、思いきり抱き締めてくれた。

「よく頑張ったな!」って。

嬉しくて離れたくなくて、「充電させてください」と私は言って拓斗さんの背中に手を回した。

周りは暖かく見守ってくれるけど、ダイチさんは舌打ちしていた。

私はその舌打ちを聞こえないふりをした。

岬さんは少し遠くで私を見ていた。

「一点も…決められなかった…」私が言うと、

「そんなことないよ。皆で取った得点だよ。お前のアシストが皆に力を与えた。得点は、決まったからじゃない。どれだけ努力したかが大事なんだよ」

拓斗さんはそう言いながら、私の背中をトントンしてくれた。

「そろそろ後半始まるわよ~」と綾子さんに言われて、私たちは離れた。

拓斗さんの言う通りだと思った。

プロとして何年も大舞台に立ってきた拓斗さんだからこそ、その言葉の重みを感じれる。

私は拓斗さんに惹かれ始めてることに気がついた。

でも、この気持ちを認めてしまえば、岬さんに申し訳なくて、今はまだ気づかないフリをした。

そして、後半戦ー

コートに入った私は、さっきより、気持ちが落ち着いていることに少し驚いた。

「顔つき変わったね~」とみよりは言ってくれる。

行ける!そんな気がして私はみよりに微笑みかけた。

『絶対!勝利に導いてやる!』そう自分を奮い立たせた。

私は積極的に攻める。

ガンガンシュートも打っていった。

後半も大差で勝った‼

けど、まだ一勝だ。気を緩めてはいけない。

「拓斗さん!見てくれてました?」と私が拓斗さんのところにいくと、

「もちろんだよ!やるじゃん」そう言って優しく頭を撫でてくれるのだった。

私はそれについつい頬が緩んでしまう。

私はまだ気づいていなかった。

岬さんと涼が私たちの様子を見ながら何を話していたかなんて。