下手に動き回れば余分な体力を奪われる。

けど…動かないわけにはいかない。

相手は体力を奪ってから攻める気か、時間稼ぎしてるのが丸分かりだ。

私は歯を食い縛った。

そしたら横から声がとんだ。

「おい、お前ら、死ぬ気でぶつかってこい。相手は時間稼ぎしてんぞ」と。

岬さんだった。

そこから岬さんの挑発と私の応援で何とか、逆転まで成功した。

時間は後10秒ほど。もう一本…と私は祈った。後、一本決まれば完全勝利だ!

けど…その一本が中々決まらない。

両者意地になってぶつかり合ってる。

試合終了のホイッスルがなる直前、ウチのメンバーが意地で投げたボールはキレイな弧を描き、バシュッと大きな音を立ててゴールに入った。

完全な、正当勝利だった。

相手は挨拶もろくにせず、去っていった。

泣いてるメンバーの横で歯を食い縛ってる涼、そして、暴れそうになってる化け物乃木坂さん。

それを必死で羽交い締めにしている生徒…。

コソッと岬さんが教えてくれた。

「今羽交い締めにしている人がキャプテンだよ!」って。

勝ってしまった。そして、男子の決勝進出が決まった。

そして試合は女子の試合に移った。

女子の試合は最初から押されっぱなし…。

このままでは負ける!!そう思った瞬間、タイムが取られた。

えっ?このタイミングでタイムなの?

皆が集まる輪の中にナゼか私もいる。

そして、男バス、岬さんも。

「みずきー私、もう無理。勝てない…」とみよりは言ってきた。

「試合は終わってない。諦めないで!」と私が言うと、

「なら、みずき代わりに出てよ…」とみよりは言った。

そんなの無理に決まってる。

だって私は…選手登録してないもん。

練習だってずっと出来ずにいる。

だから、出れるはずなんてないのだ。

なのに…皆から痛いほどの視線を浴びる。

無視できない私はキャプテンを見た。

私はいち、応援者、ユニフォームだってないのよ?

「…無理よね…今回は…。けど、男子が素晴らしい試合を見せてくれたわ。だから、私たちも、負けても最後まで諦めず戦いましょ!」とキャプテンは言った。

そしたら皆、頷いて、コートに散っていった。

頑張れ、皆。頑張れ、みより!!

私はそう叫びながら応援した。

結局、後半戦も逆転は出来ないまま、前半同様大差で負けてしまった。

悔し涙を流して戻ってくる皆に、

「お疲れさまでした。皆、かっこ良かったです」と私は声をかけた。

皆は歯を食い縛って、鼻を啜っている。

けど、みよりだけは大声をあげて泣きながら私に抱きついてきた。

「うー、みずき、ゴメンね…負けちゃったぁ~」って。

私はそんなみよりの背中を優しくトントンしながら、

「大丈夫だよ。バスケ初めてだったのに、良く頑張ったね」と声をかけると、みよりはさらに泣いてしまった。

「また冬、頑張ろ!今度は一緒に…」と私が声をかけると、顔をあげてこちらを見た。

私は決めた。完全復帰を。もう大丈夫だ。

「よぉーし、じゃあ男子応援して、さっさと帰ろ。次の試合に向けて」とキャプテンは言って、私たちは改めて男子の応援をする。

決勝の相手は…ここもまた名門で。

涼のいる高校と毎年競り合ってる高校。

皆バテてるのもあり、歯がたたない。

けど皆、頑張ってる。