引き継がれて数百年。

今を生きる鬼城 瑞葉(きじょう みずは)
に引き継がれるその血、その力が。

「お母様……私」
「瑞葉…こればかりは……ね?」
「嫌よ!」
お母様……鬼城 智美(きじょう さとみ)から私へと……呪術師の力が引き継がれるのだ。私は普通に過ごしてきたこの14年間が消えてしまう……それが嫌なのだ
「瑞葉……大丈夫よ。もう、あなたは高校生になるし、皆と離れるのよ?」
「なんで!?離れてからでいいじゃん!」
「……古くから十五になる子…呪術師の力継ぐこと。……あなたはもうすぐ十五なのよ!誕生日の日に…儀式をするの……だから……ね?」
「……呪術師を受け継いだらどうなるの…?同じ日々を過ごすことができるの?」
「それは……」
「瑞葉…それは難しいかもしれん」
「お父様」
お父様……鬼城 慶太(けいた)が突然口を開いた。
「呪術師だ。制御するにも時間がかかるかもしれない。それに、外部に知られてはならぬ……鬼城家の本来の住む場所……そして、呪いの事。今の人々は呪いを軽くしか考えていないからな。だが、それでもいいとは思う」
「……」
「瑞葉にもいつかわかる時が来るわ。呪いの力を広めてはいけない事。呪術師が今も受け継がれている意味も……」
「引き継いでくれないか?…瑞葉」
「…私がやらないとダメなんでしょ……仕方ないじゃん」
「……ごめんね」
「ううん…」
「早速準備をしてくる…。…鬼妖霊村(きようれいむら)へ移る為のな」
と、言葉を放ち和室から出て行った。
「鬼妖霊村?」
「ええ。……鬼妖霊村は本名鬼呪神城村(きじゅしんじょうむら)というのだけど……集落を悟られないようにそう呼びあったのよ……。鬼城家、神道家が住まう集落よ……神道も呪術師の家系。でも、私達の家来のような者かしら…」
「そう……。……あれ」
「瑞葉どうしたの?」
「同じクラスに神道 亜沙飛(しんどう あさひ)って子いるんだけど……」
「…鬼城と神道なんて鬼呪神城の者だけが持つ苗字。じゃあその子も……鬼呪神城の」
「亜沙飛君…物静かでいつもホラーとかの本読んでて、用がないと誰にも話しかけないし、話しかけてもそれだけ話して構いもしないんだよね……皆は不思議君っていう目で見てるよ……」
「…そう」
「でも、たまにすっごい暗い時があるんだよ……。怒っているようでもないし、かといって悩んでるって感じでもないのに……」
「神道家の習わしかしら……たしか…………」
「お母様?あ、ちょっ待って!」
急にすっと立って和室から出ていくお母様を追いかけていった。
誰もいない和室に、一つの黒い影が現れた気がした。