『あの…』

友人と飲んだ帰りの電車で一人ケータイを弄っていたら、突然話し掛けられた。


ケータイから視線を声がした方に移すと、そこにはいかにも【不気味】って言葉が似合いそうな女が立っていた。


白のフリフリのワンピースに似つかわしくない伸びすぎた前髪、少しウエットな質感がより一層雰囲気を醸し出している。

何だろう? パッと見た第一印象は某映画の貞子って感じだったので、俺はそれ以降コイツの事を陰で貞子って呼ぶようになった。


『はい、何ですか?』

恐る恐る返事をすると、貞子は低い声でこう言った。


『2週間ぐらい前もこの電車に乗ってましたよねぇ?』


『2週間前? あー確かにそれぐらい前も友達と飲んだ帰りにこの時間の電車に乗ったかも知れないです。』


割と唐突な質問だったので、反射的にあまり考えずに質問に答えてしまった。


今思えば、何でこんなに素直に質問に答えたのか解らない。


すると、貞子がその不気味さを全開開放してこう言った。


『もう一回見かけたら話しかけようと思ってたんです。』


……何だコイツ。