失恋した、と泣く彼女に 恋に落ちる僕は 最低な人間だと思う。 「じゃあ、濡れないところまで一緒に行こう?」 僕はそう提案したんだ。 「…っはい。」 ザーザーと降り続ける雨は 気遣いなんてできそうにない。 「あそこのカフェに行きましょう。」 「…あの」 「はい?」 「あの…お名前は…」 「あぁ、僕は黒瀬 海人です」 「黒瀬、さん。」 「はい」 彼女の声は 鈴の音のように綺麗だった。 「私は清水 涼華です」 ほら、どこか華やかででも儚くて… そんな名前だ。