でも、もう少しだけ勇気がほしい。




──こんこん

信治の部屋のドアをノックする。


「あたし、花です」

「ん。いいよ」

がちゃり、とドアを開ける。

信治はベッドで雑誌を読んでいる。

あたしはベッドの近くの床に座り腕だけベッドにおく。

信治を見上げる形になる。


「どした?花。」

信治はあたしに目を向けることなくそう聞く。

「あたし…頑張ろうと思うの。」

「…松田か?」

「うん…話し合おうと思うの。

できるかな…っ」


本当は怖い。

できるかな、って聞くのは
”頑張って”
とか
"お前ならできるよ"
っていってほしいの。

信治の優しさに漬け込んだあたしのわがまま。