「はるはいいな、って言ったんだ。俺の勘違いか。ふはっ。」

顔をクシャリとさせて綺麗に笑うはるなお先輩。

うそです。うそです。

ごめんなさいぃ…!

本当は【はるなお先輩】ってはっきり言いました!

【はるはいいな】なんてこと言ってません!!

でもでも、なんか恥ずかしいもん。

「ごめん、呼ばれてないのに来て。」

苦いのか、甘いのか。

わからない、この気持ち。

大人っぽくて綺麗なはるなお先輩。

ほかの人とは違う。

チャラチャラなんてしてなくて、全てが透き通るような人。

「はるなお先輩、は…。どうしてここに居るんですか…?」

一瞬の沈黙。

そして、はるなお先輩は形の良い唇を開くーーー。

「さぁ、ね。」

先輩は言った。

見てはいけないもの、聞いてはいけないものを見たかのようだった。

サァァ、と気持ちのよい風さえ、いまは止まってみえる。

切ない、苦しげな表情。

ダメだ。

見たらいけないーーー。

「よーし、そろそろ戻ろうかな。」

はるなお先輩は立ち上がり、ドアの方へ向かう。

「あっ、私も戻ります。」

ついていく私。

別れる時に軽く手を振って。

つまってた息を柔らかく「ふぅ。」とはきだした。