今日はもあが部活だから1人だな。

どーしようか。

帰ろうかな。

教室にでもいようかな。

私は靴箱から教室にもどろうとした。

「はる!」

声が聞こえた。

えっ?

誰かがはるって呼んだよね?

もあくらいしか、"はる"って呼ばないのに。

クルリと振り返ると、

「あっ、ナオト先輩!」

ナオト先輩がいた。

今、ナオト先輩がはる、って呼んだんだよね?

なんで、急に、名前呼び。

「今から帰るの?」

「あ、迷ってて……。」

「もうすぐ、はるなおくるけど?」

ナオト先輩は意地悪っぽく笑った。

もう、……。

「一緒に帰れば?」

ナオト先輩はそう言う。

「え、と、いいんですかね……。」

嬉しいな。

顔がゆるむのが自分でわかる。

はるなお先輩に会いたいなぁ。

「あ、来た。はるなお!」

ナオト先輩は声をあげて、はるなお先輩に手をふる。

はるなお先輩は、こちらに向かってくる。

あ、れ?

なんか、怒ってる?

「はるなお、どうした?機嫌悪い?はると帰りな?」

ナオト先輩が心配そうに聞く。

はるなお先輩は一瞬驚いた顔をしてすぐに下を向いた。

「べつに、はるちゃん帰ろ。」

グイっと手を引っ張られ、歩き出す。

えっ?えっ?

何、この状況。

「は、はるなお先輩…?」

校舎をあとにしてもはるなお先輩は黙りこくったままだった。

「やっぱり、はるちゃんは、なおとが好きなんだね。」

え────?

「違いますって!」

なんで、なんで。

誤解してしまうの。

「さっき、嬉しそうに話してたね。」

「はるなお先輩!ちがっ……。」

悲しい。

誤解しないで。

「はるちゃん、ナオトはいい奴だよ。がんばれ。」

はるなお先輩は目を細めて笑った。

どくん……。

「あ、……」

もう間に合わなかった。

はるなお先輩は歩き出して。

私は俯いてた。

なぜ誤解するの。

そんなのやだ。

私、誤解されたままはるなお先輩と仲良くできないよ。

「はるなお先、輩……!」

ジャリ。

はるなお先輩の足音がとまった。

「わ、たし、はるなお先輩と友達やめます、ね。」

苦しいよ。

「え?はるちゃ────」

私は走り出していた。

わけわかんない。

なんでこうなったの?

はるなお先輩。

お願いだから。

私を嫌いにならないで。