ザッ、ザッ。

ほうきで中庭掃除。

「はーぁ、はるはいいねぇ。はるなお先輩と仲よさそうで。」

もあが羨ましそうに私を見る。

「えっ、…でも、はるなお先輩はレンカ先輩が…。」

「でも、それは直接聞いたことじゃないんでしょ?それなら、わかんないよ、好きな人、はるかもねー。」

ニヤニヤと意地悪っぽく笑う。

「それはないよ!」

うん、それは、絶対に。

ない。

てゆか、こんな広い中庭、2人で掃除、できるかな…。

「うわぁ、みて、これオオイヌノフグリだぁ。かわいい!」

もあはオオイヌがなんちゃらこうちゃらっていうお花の前にちょこん、と座る。

かわいいな、お花ももあも。

オオイヌ……は、淡い紫色?水色?みたいなかわいい花で癒される。

「四つ葉さがそーよ!」

もあが提案して、私たちは地面をじーっとみつめる。

そしたらね。

「変人ちゃんたち、みーっけ。」

って聞こえたの。

顔を上げると、

「あ、レン先輩だ!」

てことは…

「あ、はるちゃんだ〜。掃除だね。」

大好きな人の声が聞こえた。

私はバッと立ち上がる。

「ライン、してきたから、ばれて掃除ですよ…。」

プイッとしてみると、

「ふは、ごめんごめん。俺もばれたの。一緒にしよ?」

ドキドキ。

「は、はい…。」

「あー!はるちゃん、顔真っ赤だぁ?」

ユウヒ先輩が言う。

ぎゃっ。

とまれ、とまれ、顔あつい〜。

「あ、そこの子、もあちゃんだ。」

ユウヒ先輩が指差す。

もあは赤くなってかたまった。

「かわいーよねー。なんか、キリッて感じがいいわー。」

ナオト先輩がニコリと笑う。

確かに。

もあはサラサラの髪をポニーテールにして、スッキリとした美人さんだ。

でも、性格は穏やかなんだよね〜。

「もあちゃん、だから、もありんね!」

ユウヒ先輩が笑う。

もあも、かすかに微笑んだ。

緊張と嬉しさが入り混じった顔で。

「は、はやくしましょう!」

もあはパッと下を向いて、掃除を始めだした。

みんなも、そーだねー、って言ってほうきをバザバサ。

もあは私にそっと近づいて、

ギュ、と手を握った。

タタタ、

「ユウヒー!」

ふわふわ、大人の香水のにおい。

「おっ、レンカ!ごめん、先帰ってて!」

レンカ先輩…??

「私、ちょっとトイレ行ってくるね。」

もあは苦しそうな顔をして、いった。

「あ、村上もあちゃん!」

レンカ先輩はもあの名前を呼んだ。

もあはピタリと止まって、ぎこちない笑顔を見せた。