「はるちゃん、みてっ!!」

昼食のあとは、5人くらいで誰かの薄汚い机を囲む。

「なぁに?」

めをむければ、それは写真で。

ほっそりとして、かっこいい、綺麗な顔立ちの男の人。

なんだっけ。えーと。

「川本 晴尚 先輩!」

そうだそうだ。

はる、なお。

昔みたいな名前。

けど、綺麗な名前。

「やばいよねっ、かっこよさとか!」

かっこよさ、とか?

他に何かあるのかな。

こうやって、私は話に興味を持つだけで行動には示さない。

はるなお先輩なんて遠くからしか見たことないし。

いつもキラキラのかっこいいグループにいて。

女のこに大人気。

私は恋なんかしてる場合じゃないけど。

〜〜

授業もおわり、帰路を歩く。

玄関を開けると、

美晴さんがちょうど帰る頃だった。

お父さんはお母さんに気を使ってるのか結婚はしない。

「こんにちわ。」

軽く礼をしてみせると、

ニコニコと笑う美晴さん。

綺麗な顔をしてて、コーヒー色の髪の毛もフワフワに巻かれてる。

上品、って感じのひと。

「またね、はるちゃん。」

通り過ぎると、あの。

香水のにおい。

大人みたいな柔らかくて甘い香り。

「悪いな、はる。今日も晩飯いらないわ。」

お父さんはそう言って家をでていく。

うん。知ってる。

私はガチャン、と閉じた玄関に頭を預けて、ぼーっとしていた。