「はるなお先輩っ」

「お、はるちゃん、こんちわ。」

いつもの屋上。

フタリ。

緩やかなこの時間が大好き。

お弁当の蓋をパカリとあければ、はるなお先輩は羨ましそうに覗いて、

「ちょーだい!」

と無邪気な笑顔で笑う。

「ふふっ。」

好き。好き。大好き!

だけど、食べ終われば、

はるなお先輩はフェンスに近づいて、遠い空をながめる。

下にいる、1人の女性もね。

蓮華先輩。

綺麗なひとだ。

容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群、おまけに性格までいいんだとか。

学校一の女子かもなぁ。

そりゃ、はるなお先輩やユウヒ先輩たちのグループじゃなきゃ付き合えないよな。

「はるなお先輩は、いつも、レンカ先輩をみつめてますね。」

自爆行為。

なんてこと、聞いちゃったんだろ。

「あはは、違うよ?」

苦笑いのはるなお先輩は嘘が下手だ。

「ユウヒと付き合ってるし、レンちゃんはただの、幼馴染。」

レンちゃん、って呼んでるんだ。

その特別な感じに苦しさを感じる。

「そうですよね!すいませんっ。」

ニカッと笑ってみせると、安堵の表情を浮かべるはるなお先輩。

かっこいい…。

優しげな瞳も、

ふわりふわりと風にまう柔らかな短髪も、

スラリとした体型も、

ゆるく着こなした制服も、

すべてかっこいい。

「じゃあ、だれが好きなんですか?」

意地悪なこと聞いてしまった。

「えー?はるちゃん、かな?」

え?

どきん、どきん…。

「ごめ、冗談!からかってしまっただけ…、ごめんね、怒ってる?」

…っ。

冗談にもほどがある。

「お、こってなんていませんよ!」

笑う。笑う。

ちゃんと笑えてるかな。

冗談なんて、バカなことしないでほしい。

そんなこと言えないけど。

いっしゅんでも期待した私がバカだった。

「今日、は、もどりますね!」

困惑がばれないようにわらう。

「なんで?やっぱ、怒っちゃった?ごめん。」

「違いますよ〜、図書室に用があって。」

嘘つきな私、大っ嫌い。

「そか…。バイバイ。」

フェンスから手を離すと、私は屋上の扉を開けた。

「はぁ…っ。」

苦しいなぁ。