〜夜〜

そっか。

もあは苦しい恋をしてたんだなぁ。

お風呂上がりの妹のなっちゃんの髪をときながら、ボォーっと考える。

お父さんはまた美晴さんのとこ。

なんか、疲れたや。

今日はもう寝よう。

〜〜

お昼休み。

久々に、屋上いってみようかな。

べつに…。

はるなお先輩がいるからじゃないもんねっ。

そう、自分に言い聞かせて階段をのぼる。

古く錆びた扉を強くおすーーー。


ふわふわふわ。

春の終わりをつげる暖かな風が私をかこむ。

目線の先には。

はるなお先輩はフェンスの先の中庭を見つめていた。

「はるなお先輩…!」

勇気を出して、声をかける。

「あ。はるちゃん。」

はるなお先輩は私をみるなり、ニコニコと笑ってくれる。

どうしよ、嬉しいや。ふふ。

「何してるんですか?」

そろりと近づく。

「んー?なんもしてないよ。」

フェンスかは離れるはるなお先輩。

きっと、なにかある。

フェンスの先に。

中庭にーー。

風を受けながらフェンスをのぞく。

あ、ユウヒ先輩……。

と。

だめじゃん。

あぁ。そういうことか。

全部、全部わかってしまった。

サラサラの髪がなびいてる、綺麗な女の人。

前も見た、よね。


〈レンカさん〉


片想い。片想い。片想い。

もあも、私も。

はるなお先輩も。

涙がこぼれそうになって、必死に唇をかみしめる。

「叶わない恋なんて、しないでください…。」

私、嫉妬してる。

そんなのしちゃだめなのに。

なんで、泣きそうなの?

好きでも、なんでも、ない。

はずなのに。

「はるちゃん?泣いてるの?」

大きく首をふる。

「目にゴミが入りました!風で飛んできたんですかね…っ。」

服の袖で少しだけこぼれた、涙をふく。

「はるちゃんも。恋してるんだね。」

《も》なんて言わないでよ。

「してません、誰も好きじゃないです。」

はるなお先輩に向き合う。

はるなお先輩は私の涙で濡れた瞳を見て、一瞬驚く。

だけど、その後に優しくなめらかに、美しく笑った。

「ユウヒ…が好きなんだ?」

「…え?」

なに、言って……。

「だめだよ、彼女いるんだから。」

なんでなんで?

誤解されてる?

あれ?私、なんで、こんな気持ちに。

わかんないよ。わかんない。

「諦めたほうがーーー。」

はるなお先輩に、こんなこと言われたくない!

「やめてください!」

私はそういうと、屋上を離れて走っていた。

あぁ。終わった。

なんであんなこと言ってしまったんだろう。

ごめんなさい、はるなお先輩。