悪夢から蛇

「うん。夢占い知らないの？」

　……嫌な予感は当たった。

「調べてみるからちょっと待っててね」

　柚香はベストのポケットから携帯を取りだし、何やらカチャカチャといじり始めた。

「いや、調べなくてもいいよ」

　きっぱりと断わったのに、柚香は僕の都合などお構いなしで携帯を操作し続ける。

「……あ！　これじゃない！？」

　本当はどうでもいいのだが、ここまでくれば見ないわけにもいかないだろう。

突き出された携帯の画面を、一応の義理で覗き込んだ。

　画面は文字で一面びっしりと埋め尽くされていた。

どこを見ればいいのか迷って、画面上で視線をぐるぐると泳がせる。

「読んであげるからいいよ」

　じれったくなったらしく、柚香は携帯を引っ込めてしまった。

「あのね、死の夢は別に悪いモノじゃないんだって。それどころか、夢で死ぬのは幸福の象徴らしいよ」

　良かったね、とでも言うように笑う。

「そうなんだ、知らなかったなぁ。安心した。ありがとう」

　どうでもいいという気持ちを隠して、精一杯喜んでいるふりをした。