【短】オンシジウム


引っ込めかけた僕の手に君の手が重なる。

ハッとした僕にいたずらな笑みを浮かべた君が顔を寄せる。


「バーカッ。」


耳元で囁かれて心臓が鳴った。

いいよ、と君が僕に近付く。

不覚にも泣きそうになった。

しおらしく姿勢を屈める君の髪に僕はオンシジウムの花を添える。

そのまま君の手を取ってホールの脇に移動する。

手汗、かいてないかな?

些細な事が気になってソワソワした。


「本当はね、さっきの男性とは何にもないの。ただ協力して貰っただけ。」


真っ直ぐホールの中央を見つめ凛とした姿勢で君は言った。


「え?」

「もう…。君が中々積極的になってくれないのがいけないんだからっ!」


ちょっと怒ったようにグイグイとダンスの輪の中に僕を引っ張る。

でもね、今なら分かるよ。

その怒った顔も、本当は照れ隠しだって。


やっぱり僕は君じゃないとダメみたいだ。





花言葉は、

___________…僕と踊って下さい。


-fin-