「菜美ちゃんが、階段駆け上がってくの見えて、作業して終えて教室行ったら、夜子ちゃんが屋上って教えてくれたの!」

「そうなんだ…」

「どうかしたの?」

美桜は、どこまでも優しかった。

「美桜は、爽が好きになってモヤモヤしたりした?」

「うん、したよ。」

私の問いにまっすぐ前を見たまま答える。

「でもね、爽くんの笑顔を見たら、どーでも良くなるの。
爽くんモテるから、彼女でもないのにモヤモヤして、それに、爽くんが自分を好きじゃないことくらい知ってる。
でも、私の前で笑ってくれるって事は、少しでも期待してもいいのかなって。
笑顔ってその時その時で違うと思うんだ。
同じように見えても、その時その人が感じてる気持ちで違うと思うの。
だから、私に向けて笑ってくれるその瞬間の爽くんの笑顔は私しか知らない顔。
そう思うと嬉しくなったの。」