「雪峯千帆…!?」

お姉ちゃんは大きな目をもっと見開かせて、驚いている。

「何か知ってるの?」

「あたしの1個下の後輩から、ヤバイ奴だって聞いたことある」

「え…?」

心臓が嫌な音をたてた。

ヤバイ…って。どんなふうに…。

「後輩がいうには、表向きは金持ちで、頭良くて美人で…とにかく優等生だけど、裏ではお金回してムカつく奴をボコボコにしてるらしーよ」

こ、怖すぎ…!!

「お金回して…って誰に?」

「そりゃあたしみたいな喧嘩強い不良?」

「怖っ!」

お姉ちゃん、喧嘩強いんだ…なんて思うのと同時に、押しよせる恐怖。

「あんな、優しそうな人だったのに」

教科書を拾ってくれた時のことを思い出す。

そんなことをする人に見えないんだけどなあ…

「でも、なんでお姉ちゃんの後輩はそのこと知ってるの?」

「後輩の友達が、雪峯に直接依頼されたんだって。
ムカつく奴がいるから…って。」

「……やったのかな?」

「わからない…そこまでは聞いてないけど」

けど…もしこれが本当なら…。

先輩は、本当に最低だ。

ムカつくなんて理由で、簡単に人を傷つけるなんて。

どうしてそんなことができるの…。