*王子と冴えないプリンセス*



あたしは、こんなに寂しげなひーくん、初めて見たよ。

あんなに一緒にいたのにね。


「仁菜はさ、優しいよね。俺が出会った女の中で、仁菜が一番、純粋で…優しかった」

呟くように、どこか遠い目で、そう言うひーくん。

なんでそんなこと言うの?

今更、そんなこと言わないで。

「それとさ…仁菜はもう覚えてないかもしれないけど…初めて俺と話した日、靴、一緒に探してくれたじゃん」

「え…」

たしか、あたしがひーくんを傷つけないようにって、悪口を書かれてたのを必死で消した…

「水たまりに落ちてたなんて言って、ホントは悪口書かれてたの、水道で洗ってたんだよね?」

バレてた…。

「そうだよ…でも、なんでそう思ったの?」

「靴をよく見たらさ、マジックの消しあとが少し残ってて、落書きされてたんだってわかった…」

「そっか…」

「でも…

そんなことよりも、必死で一緒に靴を探してくれたり、落書きを消したり…

俺を気遣って嘘までついて。

そんな仁菜の、純粋な優しさに、すごく…すごく救われたんだ」

震える声でそういうひーくん。


あんな酷いことをしてたけど、

ほんとは

ただ寂しかったのかな。

なんとなく、そう思ってしまった。

「なのに…俺は…俺はっ…仁菜を傷つけた」