*王子と冴えないプリンセス*



その日の放課後

家に帰っていると



「久しぶりだね、仁菜」

ひーくんの声が、した。

血の気が引いて、嫌な汗をかく。

あの日の記憶が、鮮明に映し出されて

身体が強ばる。

「な…なんで…」

あたしの家の近くの公園に、彼はいた。

「停学処分は…?」

「ははっ…それがさ、俺の親、家にいないんだー…だから抜け出してきたよ」

「……あたしに、何の用…?」


すると、彼は一呼吸置いて

「俺さぁ…転校すんだよね」

そういった。

「お別れを言いに来た。仁菜は、俺がどこに行こうが、もうどーでもいいだろうけど」

「そーなんだ…」

「親の急な転勤。都会の方だってさ」

ただ、

そうなんだ。

としか思えなかった。

「……そっか」


すると、ひーくんは少し寂しげな眼差しであたしを見つめた。

びっくりした。

怖いのに、こんなに怖いのに…

彼の本当の姿を、見ているようで。

その瞳を、あたしも見てしまった。