「私、しばらく家を出る。
もうあんな家には帰りたくないから。

でも大丈夫だよ。
うちの駅の一つ先の駅にママの妹の知美お姉ちゃんのマンションがあって、私がカギを預かっているの。
しばらくはそこにいる」



「家の人達は知ってるのか?」



「多分ね…
こうやって家出するの初めてじゃないから」


右京はこの威勢のいい律を頼もしく見ていた。
メソメソ泣いている女の子よりはるかに魅力的だ。


「じゃ、そこまで送るよ。
場所も知っておきたいし…」


知美のマンションは駅に隣接した超高層マンションだった。


「その叔母さんって今はいないの?」



「うん、スペインにフラメンコの勉強に行ってる」


律は玄関を開け、右京も中に入れた。
律が電気をつけるやいなや、右京は律を強く抱きしめた。


「今日の俺、合格だった?」


律は何も言わずに軽くキスをした。
そして、もう一度、今度は右京からキスをする。
さっきとは全然違うキスを。
右京のくちびるの下で律のくちびるが燃える。

ここが俺の居場所だ…

律を抱きしめ、味わい、そして、右京は溺れていく…