「ママ〜。」



あたしが谷口くんへの返答に困ってると、繋いでいたあたしの手をブンブンと振ってそう言ってきた。


あ…っと思い、谷口くんに目を向けると、目を見開いて驚いた顔をしている。


そりゃそうだよね。


23歳のあたしに、こんな大きな子供がいるなんて考えられるわけがないもの。



「え、ママ?その子って、美波ちゃんの子?」


「えっと…その、…」



喉に言葉が詰まって、思うように言い出せない。


空海は、大きい大人の人が来たからか、あたしの後ろに行って隠れてる。



「ねえ、もしかしてさ……その子って碧の子?」


「ち、違う!違う、違う。ごめん…帰らなきゃ。また、今度…!ほら、空海行くよ。」



碧の子?って聞かれた瞬間、咄嗟に否定した。


そして、谷口くんの元から逃げるようにして、空海を抱っこしてから車の元に急ぐ。


早くその場から去りたくて…


咄嗟に否定したけれど、間違ってないよね。


大丈夫…これから先に谷口くんと会う機会なんてそうないはず。


そう自分に言い聞かせた。