「美波〜!ちょっとそこのティッシュ取ってくれる?」
「無理〜!!あともう少しで始まるんだから!」
「もう。ちょっとくらいいいじゃないの…。じゃあ、祐樹取ってくれる?」
「俺も無理!!」
「はぁ〜もう!兄妹揃ってテレビの前でスタンバイすることないじゃない。」
お母さんの声を聞きながら、お兄ちゃんと目を合わせて笑う。
だって、今日は甲子園がある日なんだもん!
1分だって、1秒だって見逃したくないんだもん…
後輩のことも碧のことも応援をしているお兄ちゃんも、あたしと同じ気持ちだと思う。
…碧とは、まだ仲直りできてない。
あたしから電話を掛けることも出来なくて、碧からも電話は掛かってこないから、仲直りするきっかけがないんだよね。
でも、今日から甲子園だから電話出来ないんだってそう言い聞かせてる。
それにあれから多田くんはあたしに付きまとわないし、姿も全然見なくなった。