[多田賢介side]



「…け、賢介!賢介って呼ぶから…、あたしにもう近付かないで…っ!」



そう言って僕の目の前から過ぎ去った美波先輩。


そう言った時の美波先輩の顔…


とても傷ついていて、悲しそうで、必死で、心の底からそう思ってるような顔だった。



…美波先輩。


僕がオープンスクールにこの高校を、中学3年生の夏休みに訪れた時に出会った先輩。


出会ったというか、僕が勝手に見かけてしまっただけなんだけど。


オープンスクールの後に、部活動見学をすることが出来て、元々バスケ部だった僕はバスケ部を覗こうと思って体育館に入ったんだ。


そしたら、バドミントン部も体育館で練習をしていて。


そこに美波先輩がいて…


1人だけ輝いて見えたんだ。


色素の薄い茶色の髪の毛で、長い髪の毛をポニーテールにしていて、透明感のある肌で、パチリとした大きな目に、筋の通った綺麗な鼻、柔らかいピンク色をした小さな唇。


スタイルも良くて、背は少し小さそうだけど、そこがまた可愛い。


笑ったら、目が細くなって心の底から笑ってるっていう顔をするんだ。


感情が全部顔に出てて、驚いたら驚いた顔をして、嬉しかったら嬉しそうな顔をして、悔しくなったら悔しそうな顔をして。


すぐに僕を虜にしたんだ。