ここはサナトリウムだった。

人の近付く事のない、切り立った断崖の上に建てられている。

「鬼首會御用達のサナトリウムでな…こんな辺鄙な場所だ。訳有りの奴しか来やしない」

老医師はそう言って一升瓶をラッパ飲みする。

「お前さん達、連れて来られた時ゃあ酷いもんだったぜ。カラス片やらコンクリートの破片やらが全身に無数に刺さってて、おまけに大火傷だ。命が助かっても、ゾンビみてぇな見てくれで生き永らえるのは目に見えてた」

「……」

その割には亮二も、隣で寝ている松岡も伊庭も、多少の痕は残っているものの、傷は綺麗に治癒しつつある。