「南雲 龍宇だな。格闘特区で修羅を倒した」

背後で声がして、龍宇は振り向く。

屈強な集団に混じって、仕立ての良いスーツを着た男が立っていた。

黒髪、彫りの深い顔立ちの中年男。

野獣の群れの中で、唯一の人間という印象を受けるかもしれない。

しかし、龍宇にはそうは見えない。

この中年の男も野獣だ。

ただ、毛並みが他よりいいだけで。

「失礼だが貴方は?」

「名乗るのが遅れた」

壮年の男は薄笑みを浮かべる。

「セルゲイ・“ミハス”・ミハイルという。ビジネスマンだ」