今日も世界は回ってる

「そんで…」

キャスター付きの椅子でクルリと背を向け、耕介は言う。

「お前がいてぇなら…好きなだけいろ。どうせ部屋も余ってる事務所だからな。まぁ言ってみりゃ、下宿先みてぇなもんだ」

家を失った迷い猫の雛罌粟を、ほっぽり出したりしない。

不良探偵なりの優しさ。

都会の片隅、孤独な者同士で助け合って生きていく。

彼らなりの処世術が、そこにはあった。

「有り難う…探偵さん…」

微かにはにかむ雛罌粟。

「……」

フンと鼻を鳴らし、耕介はギシギシと椅子の背凭れを鳴らす。