今日も世界は回ってる

成程。

雛罌粟がこの事務所に入り浸る訳だ。

「雛罌粟」

耕介は椅子の背凭れをギシギシ言わせながら言う。

「依頼するか?」

「え…?」

耕介の顔を見る雛罌粟。

「お前の父親の虐待の事実を正式に調査し、警察に被害届を出すまでの依頼…依頼料は出世払いでいい。お前とは知らねぇ仲じゃねぇ。安く見積もってやる」

耕介は正義漢ではない。

世の中でどんな事が起こっていようが、自分の目の届かない所でならば知った事ではないし、目に届いた所で金にならない事ならば助けの手は差し伸べない。

が、わざわざ差し伸べはしなくとも、目の前で『それ』が起きているのならば。

『それ』を見過ごして通り過ぎるほど、耕介は冷血漢でもない。