夏休みに入った海岸。

多くの海水浴客でごった返している。

「もう…」

耕介の行動は早く、早速環の撮影現場を探してどこかへ行ってしまった。

見失った雛罌粟は、少し機嫌を損ねている。

折角水着も新調して、耕介好みの露出度の高いのをチョイスしたというのに。

肝心の耕介はそれには目もくれず、環の方に気が向いているらしい。

耕介に見て欲しかった雛罌粟の水着姿は、多くの海水浴客の男性の注目の的だ。

そんな彼女に。

「何してんだ?」

早くも男が声をかける。

ナンパ目的か。

昔ならばホイホイと尻軽女よろしくついて行っただろうが、今の雛罌粟は耕介一筋。

身持ちは硬い。

気安く肩に手をかけた男に、強烈な肘鉄をくれてやろうとして。