今日も世界は回ってる

垂直跳びからのアッパーカット!

右拳、右肘、右膝が瞬時にしてセルゲイの体に叩き込まれる!

腰を落とし、拳を腰溜めに構えた状態から上空に向かって跳躍しつつ拳を振り上げる事で、跳躍と拳撃の速度を加算し破壊力となす究極の対空技。

『南雲式上げ打ち』

この一撃を。

「おっと」

セルゲイは片手で受け止める。

受け止めるといっても、その巨躯が宙に浮いているが。

「あれから会わないうちに、また腕を上げたか?龍宇」

「無論だ、精進し続けない武道家などいない!」

宙に浮いたセルゲイに対し、龍宇は指の第一関節を折り曲げる熊手での連続攻撃、熊手連破(くまでれんぱ)!

更に後ろ回し蹴りの追撃!

そのどれもをヒットされながら。

「温いな」

セルゲイは何事もなかったように着地した。

無傷という訳ではあるまい。

だが表面的なダメージでしかない。

体の芯にまで、威力が達していないのだ。

「芯にまで達する技というのは…」

セルゲイが腰溜めに構える。

(来る…!)

龍宇が警戒するものの。

「こうっ!」

受け止める為に身構える前に、セルゲイは肩からタックルを決めつつ、レスリングのタックルのように足を引く!

スピアー!

為す術もなく、龍宇は後頭部から地面に転倒した。

…強打したせいで、目の前がグニャリと歪む。

「多少は進歩したようだが、それでもなってないな」

倒れた龍宇の髪の毛を摑み、引き摺り起こすセルゲイ。

「まだこの俺には及ばない。ロシアでは帝王の名を冠するこの俺にはな」

ゆっくりと、龍宇の体が担ぎ上げられていく。