炎が上がる。

チャイナタウンに、駅前に、ORIHA本社ビルにさえも。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

臍出しのウエイトレスのような衣装を汗と血に塗れさせたまま、織葉 莉々(おりは りり)は呼吸を乱していた。

既に何発もの打撃や投げを食らい、体力は消耗し切っている。

だが倒れる訳にはいかない。

彼女はこの格闘特区の最後の希望なのだ。

倒れる訳にはいかない。

…目の前の、この仕立ての良いスーツを着た男を倒すまでは。

セルゲイ・“ミハス”・ミハイル。

自称ビジネスマンのこの男は、突然格闘特区に現れるなり『格闘特区を買収する』と宣言。

ORIHA社長である莉々の父親が拒否するなり、武力行使に出た。

セルゲイ配下のロシアンマフィア、『SoIntsevskaya Bratva』に命じ、格闘特区の各所で暴動を起こしたのだ。