田中君のお母さんは、急に恐ろしくなり、
「あなた。一寸、来て。」
と、田中君のお父さんである田中靖雄氏を呼びました。
「なんだ、急に。」
「実はね。嘉樹が、こんな手紙を……」
と、田中君のお母さんは、自分の息子が話した不思議な出来事の一部始終とあの恐ろしい手紙の内容を夫に話しました。
「ふむ。そうか……。とりあえず、警察に相談した方が良いだろう。」
「でも、相手は吸血鬼って名なっているような奴なのよ。そんな恐ろしいものを、日本の警察が倒してくれるのか不安だわ。ましてや、自分の息子の命がかかっているんですよ。」
「おいおい。現実の世界に吸血鬼なんつうモンスターがいると思うか?どうせ単なるいたずらだろう。」
「でも、あの手紙を読むと、どうも現実味を帯びてしまって……。」
「そうか。そこまでお前が言うのなら……、仕方ない。警察よりも優秀な奴に頼んでみるか……。」
「えっ……、そんな方がいるんですか?」
「ああ、俺の大学時代の親友でね。まぁ、今は探偵をしているんだよ。そいつは、警察でも解らなかった未解決事件を、あっさり解いちまったんだ。それ程優秀な奴なんだよ。」
「あなたのお知り合いに、そんなに優秀な方がいらっしゃるのなら、その方にお願いしましょう。」
「それじゃ、電話してみよう。」
そして、
「もしもし、牧田富夫さんはいらっしゃいますか?」