春・・・。




桜が咲き、出会いと別れがある季節。




私、卯花 姫歌(うのはな ひめか)はある出会いに期待していた。




それは今まで恋心を寄せていた、轟 強(とどろき きょう)先輩にまた会えること。




轟先輩との出会いは私が中学生になったばかりの時。




先生に頼まれて、ヨロヨロと重い紙の束を運んでいたところを先輩がスッと、





「俺が運ぶよ。」





そう言って、私からサッと紙の束全てを取って廊下へと歩いて行ってしまった。




(し、紳士!いや、王子様!)




そのナチュラルに助けてくれた姿が王子様みたいで、私はその日から先輩のことを意識し始めた。





その後、奇跡的に委員会が同じだったこともあり、先輩とは少し話す仲までに発展した。




積極性の無い私にとってこの事は大きな進歩。





そして、当時三年生だった先輩は名を聞けば誰もが知っている、超有名高校に入学し、私も先輩を追っかけて同じ高校に入ろうと、ひたすら勉強をした。





そのおかげで無事合格。





(また、先輩に会える)





嬉しさが込み上げてくる。





そして今日は入学式。




先輩に会えるからか、ドキドキして校長先生の挨拶が耳に入ってこない。





その後、新入生の名前が次々と点呼され、





「校歌斉唱」




点呼が終わり、校歌が流れ始めた。その時、




ゆっくりと壇上に姿を現したのは、





(轟先輩‼)





先輩は学ランに身を包み校歌に合わせて、声を出しながら複雑な動きをし始めた。





これは、応援団長しかやれない特別な事。





「応援団に入ったんだ・・しかも団長に」





とてもかっこよかった。





動きがきびきびしてて、一生懸命声を出していて、




(すごくきらきらしてる・・)




新入生は校歌がわからない。




だからその分、戸惑っているふりをして先輩の姿に集中できて。




(とっても幸せ・・・)




人目を気にしてしまう私にとって、先輩をずっと見れた時はなかなか無い。



だからこそ、今回この瞬間が大切に思えた。



(まだ、校歌が終わらないで・・・)




淡い恋は、再び強く蘇ったのだった・・・