春に咲く柚

三十センチくらい離れた位置から、やや前のめりに、心配そうな瞳を向けてくる綺咲。


その姿は可憐で、素直に可愛いと思った。


「大丈夫だよ。少し寝不足気味なだけ」


自嘲気味にそう答えると、しかし何故か、綺咲は一層眉を垂らした。


「寝不足なら、駅に着くまで寝ててください。私、隣に居ますから」


何てことを言う。


その言葉に、俺は思わず笑った。