春に咲く柚

「ゆ、柚…先輩……?」


驚いたように見開かれた瞳。


しかしその瞳はすぐに伏せられ、隠された。


気付けば、俺は綺咲を抱き締めていた。


床に座り込み、膝を両腕で抱えた、小刻みに震える小さな体を力一杯引き寄せる。


俺の腕の中で、辛そうに嗚咽を堪える綺咲の頭を撫でながら、言った。


「泣かないで、綺咲。何があったの……?」