この頃のあたしは、忘れていたんだと思う。 気付いたばかりの彼への思いに浮かれすぎていて。 調子に乗って、気合いの入ったお弁当なんか作って。 ただ「ありがとう」の言葉をもらいたくて……。 いちばん大切な事実を忘れていたんだ。 いや、もしかしたら、わざと意識を向けないようにしていたのかもしれない。 あたしが…… 彼の<娘>、だということに――……。