首を傾げてキョトンとするあたしに、ママは続ける。


「美未、明日の午前中、会社に来なさい」

「……へ?」

会社?

「なん……」
「いいから、来なさい」


あたしの言葉を遮る、少し強めの口調。


「……わかった」

その迫力に負けて、全然訳が分からないまま頷いた。


するとママは満足そうな表情をした後、意味深な笑顔を浮かべ、「疲れた〜」なんて背伸びをしながら自分の部屋へと戻っていく。


本当に、訳が分からない。

だってあたし彼のこと……ママの旦那のこと好きって言ったのに。

なんか思いっきりスルーされた気がするんだけど気のせい?


「っなんなのよ、もう」

混乱する気持ちが思わず口から漏れた時だった。


「あっ!そうそう!!」

一旦部屋に入ったママが、再びドアから顔だけをちょこんと覗かせて言う。


「言い忘れてたけど。明日。
お弁当、ちゃんと作ってくるのよ?」

「え?」

「これ、業務命令だからよろしくー!!
じゃ、あたし寝るから夕飯できたら起こしてね♪」


言いたいことだけ言って、ドアを閉める始末だ。