人間って、不思議なもので。
あんなに戸惑っていたのに、一度口を開いてしまえばそんなのは関係ない。
まるで洪水のように、今まで抑えていた気持ちが一気に溢れ出すのが分かる。
最初は何とも思ってなかったのに。
それどころか、今さら再婚なんてって呆れていたくらいなのに。
いつの間にか、彼のことが気になって。
気が付けば目で追っていて……。
雪が降るかもってわざわざ伝えに戻ってきてくれたり。
美味しいってお弁当を食べてくれたり。
「美未ちゃん」って呼んでくれることが嬉しくて……。
何度も諦めようと思った。
彼はママの再婚相手で。
あたしは彼の娘。
そう言い聞かせて、前に進もうと一志と付き合った。
でもそれは……自分のエゴ。
そのことに気付いたから、一志とはこれ以上一緒にいられないって思った。
「今まで、……黙っててごめんなさい」
震える声であたしが話している間、ママは何も言わず、静かに耳を傾けていた。

